顎関節症と歯列矯正の関係|矯正で改善する?注意点と治療の進め方

「顎が鳴る」「口が開きにくい」「耳の前あたりが痛い」——こうした顎関節症の症状に悩みながら、歯列矯正を検討している方は少なくありません。この記事では、顎関節症と歯列矯正の関係、矯正で症状が改善しやすいケースと注意が必要なケース、治療を進める際のポイントをわかりやすく解説します。
顎関節症とはどのような状態か
顎関節症とは、顎の関節(耳の前あたり)や周囲の筋肉に痛みや動きの異常が生じる状態の総称です。特定の一つの病態を指すのではなく、さまざまな症状・原因が複合した病名とされています(慶應義塾大学病院 KOMPAS)。
- 口を開閉するときに「カクン」「シャリシャリ」と音がする(関節音)
- 顎や頬・こめかみ周辺の痛み
- 口が大きく開かない(開口障害)
- 食事中に顎が疲れやすい
日本顎関節学会によると、国内患者数はおよそ1,900万人とされ、一生のうちに50%以上の方が顎関節症を経験すると考えられています。特に20代〜30代の若い世代と女性に多い傾向があります(個人差があります)。
顎関節症の主な原因
現在の歯科医療では、顎関節症は「多因子病因説」が世界的に認められており、一つの原因だけで発症するとは言えません(日本歯科医師会 テーマパーク8020)。主な要因として次のものが挙げられます。
- 噛み合わせ・歯並びの問題:歯列の乱れにより左右の力のバランスが崩れ、顎関節への負担が増えることがある
- 歯ぎしり・食いしばり(TCH):就寝中の歯ぎしりや日中の無意識な食いしばりが顎や筋肉を緊張させる
- 生活習慣・姿勢:頬杖・うつ伏せ寝・猫背・長時間の同一姿勢など
- ストレス:精神的な緊張が顎周囲の筋肉の緊張につながることがある
- 外傷:顎や顔面への直接的な衝撃
噛み合わせが整っていても顎関節症になる方がいる一方、歯並びが乱れていても症状がない方もいます。原因の複雑さを理解したうえで矯正治療を検討することが重要です。
歯列矯正で顎関節症は改善する?
結論から言うと、歯列矯正が顎関節症の症状改善に役立つ可能性があるケースもある一方、矯正だけで必ずしも治るとは言えません(個人差があります)。
改善が期待できるケース
歯並びや噛み合わせの乱れが顎関節の負担に影響していると考えられる場合、矯正治療で歯並びを整えることが顎関節へのストレス軽減につながる可能性があります。特に次のような不正咬合では、矯正との関連が指摘されています。
- 開咬(かいこう):奥歯だけが接触し前歯が噛み合わない状態で、顎に偏った力がかかりやすい
- 過蓋咬合(かがいこうごう):上の前歯が下の前歯を深く覆い過ぎる状態
- 交差咬合(こうさこうごう):上下の歯列がずれて咬み合う状態で、顎の偏りを生じやすい
矯正治療でこれらの噛み合わせを整えることで、顎関節にかかる負担が軽減され、症状が緩和されるケースがあります。ただし、効果には個人差があります。
矯正だけでは改善しにくいケース
顎関節症の原因が歯並び以外(歯ぎしり・ストレス・姿勢・骨格の形状など)にある場合、歯列矯正だけで根本的な解決には至らないこともあります。矯正治療は顎関節症の原因の一つを改善する手段にはなりますが、症状の主因が別にある場合には別途アプローチが必要です。
矯正治療中に顎関節症の症状が出た場合は?
矯正治療中は、歯を動かす過程で一時的に噛み合わせが変化することがあり、顎関節に違和感や痛みを感じる場合があります。こうした症状は多くの場合一時的なものですが、症状が続く・悪化するようであれば、担当の歯科医師に速やかに相談し、治療計画を見直すことが大切です。
矯正治療のリスクとして、日本矯正歯科学会も「治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがある」と挙げています。事前のカウンセリングで顎関節症の状態をしっかり共有しておくことが重要です。
顎関節症がある場合の治療の進め方
顎関節症を抱えながら矯正治療を検討する際は、以下のような流れで進めることが一般的です(最終的な治療方針は歯科医師が判断します)。
- 歯科医師による精密な診断:顎関節の状態・噛み合わせ・歯並びを総合的に評価する
- 顎関節症の症状が強い場合はまず症状を落ち着かせる:スプリント療法(マウスピース型の装置で顎への負担を軽減)や生活習慣指導を先行させるケースがある
- 症状が安定したうえで矯正治療を開始・継続:矯正中も定期的に顎関節の状態を確認する
- 矯正後も定期的なメンテナンスとチェック:噛み合わせが安定しているかを継続的に確認する
重要なのは、矯正治療を顎関節症の「直接の治療」として位置づけるのではなく、噛み合わせを整える手段の一つとして歯科医師と丁寧に相談しながら進めることです。
費用の目安(保険適用外)
顎関節症に関連した歯列矯正は、一般的に保険適用外の自費診療となります。ただし、顎変形症と診断された場合に外科矯正と組み合わせる治療では、保険が適用される場合があります(条件や適用可否は歯科医師にご確認ください)。
- 全体矯正(ワイヤー・マウスピース):約60〜130万円が目安(医院・症例により異なります)
- 部分矯正:約10〜50万円が目安(医院・症例により異なります)
費用は治療法・使用装置・症例の複雑さによって大きく異なります。詳細は初回相談時に確認することをおすすめします。
よくある質問
顎関節症があっても歯列矯正はできますか?
顎関節症があっても、多くの場合は歯列矯正を受けることができます。ただし、症状の程度や原因によっては、矯正開始前に顎関節症の治療(スプリント療法など)を優先するケースがあります。まずは歯科医師に現在の顎の状態を詳しく相談し、最適な治療の順序・方法を確認しましょう。最終的な治療方針は歯科医師が判断します。
歯列矯正で顎関節症は必ず治りますか?
歯列矯正で顎関節症が必ず改善するとは言えません。噛み合わせの改善が症状の緩和に寄与するケースがある一方、原因が歯並び以外にある場合は矯正だけでは改善しないこともあります。効果には個人差があります。まずは正確な診断を受けることが重要です。
矯正中に顎が痛くなったらどうすればよいですか?
矯正中に顎の痛みや開口しにくさを感じた場合は、自己判断せず早めに担当の歯科医師に相談してください。治療計画の見直しや、一時的な処置(顎への負担を減らす対応など)を行うことができます。症状を放置すると悪化する可能性があります。
顎関節症の矯正治療に医療費控除は使えますか?
噛み合わせや機能改善を目的とした歯列矯正は、医療費控除の対象になる場合があります。一方、審美目的のみとみなされた場合は対象外となることもあります。申告にあたっては歯科医師に発行してもらう領収書・診断書の内容を確認し、所轄の税務署や税理士にお問い合わせいただくことをおすすめします。
顎変形症の場合は保険適用になりますか?
顎変形症(上下の顎骨のバランスに著しいずれがある状態)と診断され、外科的矯正治療の適応となった場合は、保険適用で治療を受けられることがあります。ただし、保険適用には条件があり、すべてのケースに該当するわけではありません。担当歯科医師に確認してください。
まとめ
顎関節症と歯列矯正の関係は複雑で、矯正治療が症状改善に寄与するケースもあれば、原因が別にあり矯正だけでは解決しないケースもあります。大切なのは、まず歯科医師による正確な診断を受け、顎関節の状態・噛み合わせ・歯並びを総合的に評価したうえで、自分に合った治療の順序と方法を歯科医師と相談して決めることです。
「顎関節症があるけれど矯正したい」「自分の症状が矯正の対象になるか知りたい」という方は、専門家への相談から始めてみましょう。デンティストリーセレクションでは、LINEで気軽に相談しながら、あなたの症状や希望に合う歯科医院をご案内しています。
